裁判で解雇が不当労働行為とされた場合、どう対応したらいいですか?
裁判で解雇が不当労働行為と判断されてしまいました。
弊社にはどのような影響があるのでしょうか?
解雇が不当労働行為と判断された場合、当該解雇は無効となります。
そのため、従業員としての地位が認められ、従業員から職場復帰を求められることになります。
また、無効が確定するまでの間の賃金の支払義務も発生します。
不当労働行為に対する裁判所の判決の効力
不当労働行為を規定する労組法7条には強行法規としての効力があるため、労組法7条に違反する行為が行われた場合には、その行為は無効になります(なお、労働組合が会社の行為が不当労働行為にあたるとして当該行為の撤回を求めている場合でも、あくまでそれは一方当事者の主張にすぎませんので、無効が確定しているわけではもちろんありません。)。
詳しくはこちら「ユニオンは不当労働行為にどう立ち向かってきますか?」をご覧ください。
【参考裁判例】 医療法人新光会事件 最三小判昭43.4.9(民集22巻4号845頁)
この裁判例では、会社側は、
「不当労働行為に当たると判断された解雇がどうして無効になるのかについて控訴審の判決で明らかにされておらず、違法である。」
「不当労働行為については、労働委員会の行政処分としての救済を与えるとされており、私法上の効力について、当然無効という判断は不当である。」
として最高裁判所に上告していた。
しかしながら、最高裁判所は以下のように判断して、会社側の上告を棄却している。
「不当労働行為たる解雇については、旧労働組合法においては、その11条によりこれを禁止し、33条に右法条に違反した使用者に対する罰則を規定していたが、現行労働組合法においては、その7条1号によりこれを禁止し、禁止に違反しても直ちに処罰することなく、使用者に対する労働委員会の原状回復命令が裁判所の確定判決によつて支持されてもなお使用者が右命令に従わない場合に初めて処罰の対象にしている(同法28条)。しかし、不当労働行為禁止の規定は、憲法28条に由来し、労働者の団結権・団体行動権を保障するための規定であるから、右法条の趣旨からいつて、これに違反する法律行為は、旧法・現行法を通じて当然に無効と解すべきであって、現行法においては、該行為が直ちに処罰の対象とされず、労働委員会による救済命令の制度があるからといつて、旧法と異なる解釈をするのは相当ではない。」
この最高裁判例の判旨からすれば、不当労働行為は憲法28条により保障された労働三権に対する侵害行為であるという側面から違反行為は当然に無効とするという考え方をとっていることがわかります。
具体的な影響
それでは、解雇が不当労働行為と判断された場合に、どのような影響があるのでしょうか。
この点、解雇は無効になるわけですから、組合員と企業の間の労働契約は依然として残っているということになります。つまり、従業員の地位が認められることになります。
したがって、従業員の側が復職を希望する場合、裁判所による強制的な職場復帰はなされないものの、これに対応せざるを得ない状況に陥る可能性があります。もっとも、実際には、従業員の側も裁判で争った後にその争った会社に戻って仕事をするのは事実上困難なことが多く、金銭的な解決が図られることも多くあります。
また、解雇が会社側から通知された時点から、裁判で無効が確定するまでの間は当然ですが一定の期間を要します。仮に、解雇が無効と判断された場合は、その期間中の賃金の支払義務が会社に生じます。
これは、従業員が勤務できなかったのは会社側の無効な解雇が原因ということになり、会社の責任で仕事ができなかった以上、その間の賃金については保障されなければならないという考え方に基づいています(民法536条の危険負担の問題)。
しかも、賃金支払が遅滞していることになりますので、遅延損害金として年6%の遅延損害金も会社は支払わなければなりません。
労働審判の平均審理期間は77.7日とされており(平成28年3月10日集計の最高裁行政局調べ)、それほど長期化はしませんが、裁判となった場合、1年や2年というように年単位で時間を要することからすれば、こうした遅延損害金の負担も無視できないものとなってきます。
このことは解雇が不当労働行為以外の理由で無効とされる場合も同様です。
したがって、解雇が無効と判断された場合のリスクは十分に考えた上で解雇権を行使するかを判断しなければなりません(なお、解雇の要件としては、一般的に、①客観的合理性と②社会通念上の相当性という2つの要件が必要とされています(労働契約法16条)。)。
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