ユニオンからの救済申立書が届いたらどうすればいいですか?
労働組合(ユニオン)からの救済申立書が会社に届きました。
これに対して、会社としてはどのように対応すればよいでしょうか?
まずは、申立書に書かれている内容を確認し、相手方の主張を把握しましょう。
その上で、答弁書を作成して提出しなければなりません。
申立てに対する使用者の対応
労働者や労働組合から救済申立てがなされた場合、その申立書の写しが使用者に送付されます。
当該書類を受け取った使用者は、原則として10日以内に答弁書を提出しなければなりません(労委規則41条の2第2項)。
裁判所における通常裁判の場合、訴状の送達から1か月程度先の日程に第1回期日が定められ、その1週間前に答弁書の提出期限が設定されています。
つまり、訴訟の場合には答弁書作成まで20日から1か月程度の準備期間があります(なお、訴訟での答弁書の場合は、「請求棄却を求める」という答弁だけを記載し、原告の主張する事実についての認否や反論については、「追って主張する」として、第1回期日以降に準備することもしばしば行われます。
他方、労働審判の場合には、Q&A「ユニオンは不当労働行為にどう立ち向かってきますか?」で説明したとおり、原則として申立てから40日以内に初回期日が行われること、3回以内の期日で終了することから、訴訟の場合と同様に単に「請求棄却を求める」という答弁だけするのでは不十分で、争点に対する自己の主張を記載しなければなりません。そのため、労働審判の相手方(使用者側の場合がほとんど)は、非常に準備が大変になります。)。
したがって、10日という期間は、極めて短くタイトなスケジュールです。
都道府県労委から申立書を受け取った使用者は、すぐに申立書に記載されている内容を確認し、相手方が求めている救済の内容、相手方が主張している事実について確認する必要があります。その上で、答弁書を作成し、労働委員会へ提出し、第1回の調査期日を迎えます。
申立書に記載されている内容
申立書には、裁判手続で最初に原告から提出される書類である訴状の「請求の趣旨」と「請求原因事実」(請求の趣旨を理由づける具体的な事実)に対応する記載がなされます。
すなわち、「請求する救済内容」と「不当労働行為を構成する具体的事実」が記載されています。使用者は、「請求する救済内容」、「不当労働行為を構成する具体的事実」それぞれに自身の主張を答弁しなければなりません。
答弁書の記載方法
具体的な答弁書の記載方法は、書式を参考にしてください。
まず、書面の名称(答弁書)を記載します。
そして、書面提出日、宛先(〇〇労働委員会会長)、書面の作成者、送達先(連絡先)を記載します。その後、請求する救済内容に対する答弁と不当労働行為を構成する具体的事実に対する認否を行います。
答弁では、基本的に「申立人の申立てを却下する。」、もしくは「申立人の申立てを棄却する。」との命令を求めることになります。
却下と棄却の違いですが、却下は申立期限の徒過(Q&A「ユニオンから労働委員会への救済申立てに期限はありますか?」)や申立権限のない者による申立てといったように、申立手続に法律上、形式的な不備があると判断された場合に下されるものです。
他方で、棄却は申立人の主張する事実が証拠上そもそも認められない場合や申立人の主張する法的構成に理由がない場合(例:申立人が主張する事実は不当労働行為とは評価できない)に出されるものです。
なお、却下というのは上述のとおり、形式面の問題であり、具体的な内容に入る前に審理する必要があるため、却下を求める場合には、答弁書の段階でその主張をしておかなければなりません。
認否というのは、相手方が主張する事実を認めるかどうかということです。
認否の種類には、「認める」(自白)、「否認する」、「不知」(知らない)、「争う」という4種類があります。
「否認」と「争う」の違いですが、厳密には、事実に対する否定が「否認」、法的評価(例えば、解雇が無効であるという主張)に対する否定が「争う」となります。
なお、一度「認める」(自白)としたものを後で記憶違いだったとして撤回することは基本的にできなくなります。したがって、相手方の主張に対する認否は慎重に行わなければなりません。
また、「不知」については、申立人の主張する事実を争うかどうか、確認されるケースもあります(単に、知らないだけで、その点については積極的に争点としない場合と知らないだけにとどまらず、それに関する主張が争点になる、否認に近い場合があり、その点を確認する必要があるためです。)。
このように、申立てを受けた場合、使用者に要求される準備事項は大きな負担となります。また、法的な知識や経験も必要です。
したがって、救済命令を申し立てられた場合には、専門家である弁護士に相談するべきといえます。弁護士に依頼すれば、これまで説明した答弁書の作成も弁護士に行ってもらうことができます。
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