労働委員会の審問の証人尋問はどのように行われますか?
労働委員会の審問で証人尋問が行われることになりました。
審問手続はどのようなものでしょうか?
裁判所の証人尋問との違いはありますか?
民事訴訟における証人尋問と同じ形で行われますが、裁判官が指揮する訴訟の場合と違い、労働委員会では傍聴人のヤジが頻繁に出されるなど注意しておくべき点もあります。
審問手続
審問手続は、当事者双方、労使の労働委員が参加した形で公開された状態で行われます。調査期日の中で調整した当事者や関係者の尋問が行われます。
証人尋問や当事者尋問の手続は裁判手続と基本的には同じです。
まず、証人に関しては必ず、当事者に関しては労働委員会の裁量で宣誓をさせます(労組法27条の8)。具体的には、宣誓書に署名、押印してもらい、当該書面を読み上げて嘘をつかないという約束をします(労委規則41条の16第3項)。
宣誓をした上で虚偽の陳述をした証人は、3月以上10年以下の懲役に処され(労組法28条の2)、当事者は30万円以下の過料に処せられます(労組法32条の3)。
宣誓が行われたのちに、労使双方による主尋問、反対尋問が行われます。
主尋問とは、自己の立場の側からの尋問、反対尋問は相手方からの尋問のことで、弁護士が代理人として参加している場合には、弁護士が証人や当事者に質問をし、回答してもらうことで手続を進めます。
弁護士が手続に参加していない場合でも、労働者側は通常、労働組合がサポートし、複数で一緒に活動しているため、尋問を受ける人以外の者が質問を行います。
使用者側も、自分で質問して自分で回答するということはできないため、審問手続においては、複数で対応する必要があります。
当事者による主尋問、反対尋問が終了した後、労働委員会の委員からの尋問も補充的に行われます。
労働委員会での尋問の特徴
このように労働委員会での尋問手続の流れは、裁判手続と基本的には同じですが、いくつか特徴があります。
まず、尋問事項に関する制限に違いがあります。
民事訴訟においては、民事訴訟規則に以下の質問は行ってはならないと規定されています(民事訴訟規則115条2項)。2号から6号については、正当な理由があれば行えます。
・誘導質問(2号)
・すでにした質問と重複する質問(3号)
・争点に関係のない質問(4号)
・意見の陳述を求める質問(5号)
・証人が直接経験しなかった事実についての陳述を求める質問(6号)
ところが、労働委員会の尋問について規定する労働委員会規則には、「既に行われた陳述又は尋問と重複するとき、争点に関係のない事項にわたるとき、その他適当でないと認めるときは、これを制限することができる」と定められており(労委41条の15第4項)、民事訴訟規則と比べると、明確に誘導尋問や意見を求める質問が制限されていません。
もちろん、「その他適当でないと認めるとき」という規定があるので、不適切な質問はできないと考えられます。ここで注意しなければならない点は、労働委員会の尋問を指揮するのは、公益委員であるということです。
訴訟であれば、尋問を指揮するのは、当然ですが、その事件を担当している裁判官です。裁判官は日々多くの事件を抱え、その中で証人尋問の手続を経験し、指揮しています。
ところが、公益委員は裁判官と異なり、日常的に尋問を指揮しているわけではありません。
公益委員が弁護士であれば、裁判手続で自ら尋問を行っていますので、実務的な経験もありますが、公益委員が大学教授など、法曹資格を保有していない場合、指揮には不慣れなことが多く、質問を制限しないケースも出てきます。
したがって、証人や当事者に悪影響を与える質問に対しては、代理人弁護士から労働委員会に対して異議を述べて、制止を求めるなどの措置も必要になってきます。
また、相手方が労働組合で、手続が公開されていることもあり、尋問期日には、多数の傍聴人が参加するケースも多いのが救済命令事件をはじめとする労働組合に関する事件の特徴です。
すなわち、尋問期日には、労働組合の組合員が自己の組合員や組合のサポートの一環として同じ腕章をつけて多数出席してきます。そして、証人や使用者の尋問時にヤジを行って威圧感を与えるケースもあり、注意が必要です。
その他の関連Q&A
-
1
ユニオン・合同労組とは? -
2
不当労働行為とは? -
3
労働委員会の手続等 -
4
組合活動の妥当性 -
5
団体交渉への対応方法 -
6
労働協約とは? -
7
争議行為への対応 -
8
紛争の解決制度