一方的に日時を指定された団体交渉に業務上の都合で参加できない場合どうしたらいいですか?
労働組合(ユニオン)からの団体交渉の申入書が届きました。日時が一方的に指定されてあり、当社は業務上の都合でその日時には応じることができません。
このような場合も、労働組合(ユニオン)が指定する日時に無条件に応じなければならないのでしょうか?
団体交渉の日時が労働組合から一方的に指定されている場合、調整が可能です。
団体交渉の日時の調整
労働組合が使用者に対して団体交渉を申し入れる場合、書面で申し入れることがよくあります。この場合の書面は、下記の書式のようなものが典型です。
団体交渉申入書
この書式には、団体交渉の日時が「平成〇年〇月〇日〇時から」と記載されています。このように労働組合は、事前の調整もなく、一方的に団体交渉日時を指定してくることがあります。しかも、この日時は申入れ日に近接していることがよくあります。
ところが、会社は業務を行っているので、指定された日時に団体交渉を行った場合、業務に支障がでることもあります。また、団体交渉の日時があまりに近接していると、事前に資料を確認すること等ができず、準備不足となってしまうおそれがあります。さらに、団体交渉を弁護士に依頼する場合、その弁護士にも予定が入っている場合が多くあります。
そこで、このような場合、団体交渉の日時の調整は可能です。
誠実交渉義務
もっとも、使用者は、労働組合からの団体交渉申入れがあった場合、義務的交渉事項についての申入れであれば、交渉に応じる義務があります(労組法7条2号)。また、使用者は、単に応じるだけではなく、誠実に交渉に応じなければなりません。
そのため、団体交渉が早期に開催できるように配慮すべきであり、あまり先になりすぎないように注意しなければなりません。
また、労働組合側の提示する団体交渉の日時を拒否する場合、早期に開催できるように代案を示す等の配慮をした方がよいでしょう。
会社が団体交渉の日時を調整する場合の回答例として、下記に回答書の書式を掲載していますので、参考にされてください。
回答書
【参考裁判例】延岡郵便局事件(東京高判昭53.4.27労民29巻2号262頁)
この判例は、労働組合の切迫した団体交渉の要求の日程に対して、使用者が準備の都合等の理由により、当日の団体交渉を拒否した事案である。
この事案において、裁判所は、
「被控訴人支部の団体交渉申入れはいわゆる強制労働排除についての被控訴人支部組合員の労働条件に関する正当な交渉事項に関する団体交渉の申入れではあったが、当日は延岡郵便局長が熊本郵政局から同郵便局に来局した熊本郵便局の長井業務課長と遅配対策についての業務打合せ中であったのに同日午後1時半ごろに同日午後3時からの交渉を求めたのであって時間的にも切迫して余裕がなく、かつ、また〈証拠省略〉によれば、被控訴人支部は当日の団体交渉の場所を延岡郵便局長室と指定して申入れて来たことが認められるけれども、前段認定のとおり、同日は被控訴人支部応援のため外部組合員が多数集合しており、被控訴人支部長土田靖が団体交渉申入れに際しその中で団体交渉をすると申入れたのであるから、たとえ右局長室内で交渉が行われたとしても、その交渉には混乱が伴い、相当長時間に渉ることが予測され、前段認定のとおり、滞留排送業務に努力中であった延岡郵便局の局長として同日の交渉申入れを拒否したことは無理からぬところがあり、その拒否には正当の理由があつたと認められ、また、前段認定のようにいわゆる強制労働の問題は同年同月11日から同月末までの間の問題であつたから、同日に交渉が行われなくても、同日から同月末日までの間にこの交渉が行われれば交渉自体が無意義になるという事情もなかった」
として、当日の団体交渉拒否について、不当労働行為にあたらないと判断した。
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