事故を起こしたドライバーが加入したユニオンから団体交渉を申し込まれた久留米市運送業者T社
業種 | 運送業 |
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従業員数 | 50人程度 |
ユニオンの要求内容 | 未払い残業代の請求 |
団体交渉実施回数 | 2回 |
解決までの期間 | 4か月程度 |
状況
T社は福岡県久留米市で運送業を営んでいます。
YさんはT社に5年ほど前に雇用され長距離トラックドライバーとして勤務していました。
運送業という業界の特性上、T社も長時間労働の傾向が見られ、Yさんの1ヶ月あたりの拘束時間は300時間ほどに上っていました。
ある日、Yさんはトラックで事故を起こしました。
事故によって車両が破損し、その修理費は 100万円ほどかかりました。
そこで、T社の社長は、Yさんに修理費を請求したところ、Yさんは支払いもせずに一方的に退職しました。
それどころか、Yさんは久留米市内の労働組合(ユニオン)に駆け込み、ユニオンからは未払い残業代を求める団体交渉の申入書が届きました。
社長は、団体交渉にどう対応したら良いかわからず、インターネットを通じて当事務所の活動を知り、相談に訪れました。
当事務所の労働弁護士のサポート
当事務所は、弁護士2名を本件の担当弁護士として指定し、社長とともに団体交渉に出席しました。
労働組合(ユニオン)は、団体交渉の席上で、Yさんの残業代として 500万円の支払いを求めてきました。
また、T社の労務管理の杜撰さについて、怒号を発しながら非難しました。
確かに、Yさんの拘束時間は長時間に及んでおり、多額の残業代が未払いであることは明らかでした。
しかし、長距離ドライバー特有のインター等での休息時間が除外されておらず、500万円全額を受け入れる必要性はありませんでした。
そこで、弁護士は、請求額が過大であると反論しました。
また、Yさんの事故の損害について、T社として損害賠償を請求することを伝えました。
1回目の団体交渉はそれ以上進展せずにその日の交渉は終了しました。
2回目の団体交渉では、当方からの解決案として 150万円を提示しました。
これはYさんの残業代請求額のうち、50パーセント程度が妥当な額であることから、残業代としては 250万円を受け入れること、それとT社の損害額 100万円を控除し、150万円を解決案とした内容でした。
労働組合(ユニオン)は、当方の主張にすぐに納得せず、その日の交渉は終了しました。
その後、弁護士は非公式に労働組合(ユニオン)の担当者と電話等で接触し、交渉を継続しました。
その結果、150万円と解決金とする当方の提示を労働組合(ユニオン)が受け入れ、示談が成立しました。
補足説明
トラック運転手の場合、業務中の事故によって会社側に損害が発生している場合があります。
このような場合、会社から従業員に対して損害賠償を請求できる可能性があります。
しかし、裁判になると会社側の請求が全額認められないことが多くあります。
これは、会社側にも一定程度の過失があり、その場合は過失相殺されるからです。
本件では、労働組合(ユニオン)が当方の損害賠償請求の主張をほぼ受け入れる形となったため、会社にとっては裁判よりも有利な解決となりました。
団体交渉の対応については、当事務所の労働弁護士までお気軽にご相談ください。