従業員に命じた配転が不利益取扱に該当することはありますか?
配転を命じた従業員が労働組合(ユニオン)に加入し、配転が不利益取扱に該当すると主張しています。
配転が不利益取扱に該当することはあるのですか?
配転により組合活動に支障が出る場合には、不利益な取扱いに該当する場合があります。
「不利益な取扱い」(労組法7条1号)とは
労組法7条1号は、「不利益な取扱い」として解雇のみを例示として挙げていますが、それ以外にいかなる不利益が含まれているのかについては規定されていません。
配転や出向、転籍などの人事異動の場合には、栄転という言葉があるように、場合により労働条件が向上する場合もあります。
したがって、使用者からこれらの人事処分がなされたとしても、それが必ずしも不利益取扱に該当するとは言えません。そこで、これらの人事処分が、いかなる場合に不利益取扱に該当するか問題となるのです。
配転が「不利益な取扱い」に該当するか争われた裁判例
西神テトラパック事件(東京高判平11.12.22労判779号47頁)では、会社が実施した配転が「不利益な取扱い」に該当するかが問題となった裁判例です。
西神テトラパック事件では、配転が不利益な取扱いに該当するかどうかについて以下のように判断しています。
不利益取扱禁止の趣旨が労働者らによる組合活動一般を抑制ないしは制約する効果を持つという点にあることに鑑み、
「当該職場における職員制度上の建前や経済的側面のみからこれを判断すべきものではなく、当該職場における従業員の一般的認識に照らしてそれが通常不利益なものと受け止められ、それによって当該職場における組合員らの組合活動意思が萎縮し、組合活動一般に対して制約的効果が及ぶようなものであるか否かという観点から判断されるべきものというべきである。」
と判示しています。
その上で、公務部門から製造部門への異動が過去に例がなかったもので、しかもグレードの低い職種への配転であったことや、会社の反組合的意図が認定できることなどから、配転が不利益な取扱いに該当すると判断しました。
さらに、この裁判例で着目すべき点は、当該配転が、会社の配転権の濫用により私法上違法、無効とされるか否かが、そのまま不当労働行為の成否に直結するわけではないと判断した点です。
言い方を替えれば、業務上の必要性が認められ、会社の命令として適法である配転処分であっても不当労働行為に該当する場合があるということです。
さらにいえば、仮に当該配転が、いわゆる栄転であったとしても、当該配転によって組合活動に支障が出るような場合であれば、不利益な取扱いとして不当労働行為が成立する場合もあるということです。
その他の不利益取扱の例
上記の配転のように、一見中立的な会社の処分と思われるものでも不利益取扱の不当労働行為と判断される場合は他にもあります。
例えば、他の労働者から隔離して必要性の乏しい作業を命じること等も不利益な取扱いに該当すると判断した裁判例(ネッスル事件東京高判平4.10.26労判619号19頁)もあります。
残業は、長時間労働という不利益と収入が増加するという利益の両方の側面があります。したがって、特定の従業員に特に残業を命じることも、全く残業を認めないということも不利益な取扱いに該当することになりえます。
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