不当労働行為の支配介入とは?弁護士がわかりやすく解説

執筆者
弁護士 鈴木啓太

弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士

支配介入

不当労働行為の支配介入とは、労働組合の自主性(独立性)・団結力・組織力を損なう会社の行為をいいます。

会社が、労働組合の結成や運営に対する干渉行為や労働組合の自主性を損なう可能性がある行為を実施した場合、支配介入に該当する可能性があります。

このページでは、不当労働行為の支配介入について弁護士が詳しく解説いたします。

会社としてどのような対応をすると支配介入に該当するのかと疑問に思われている方の参考になれば幸いです。

労組法7条3号

労組法7条3号は、「労働者が労働組合を結成し、若しくは運営することを支配し、若しくはこれに介入すること」と規定しており、いわゆる企業の支配介入を禁止しています。

また「労働組合の運営のための経費の支払いにつき経理上の援助を与えること」と規定しており、いわゆる経費援助を禁止しています。

労組法がこのような規定を設けた目的は、会社からの労働組合への影響力行使を排除し、労働組合の自主性を保持するためです。

引用元:労働組合法|e-Gov法令検索

 

 

不当労働行為の支配介入とは

支配介入とは

支配介入の不当労働行為は、労働組合が会社との対等な交渉主体であるために必要な自主性(独立性)、団結力、組織力を損なうおそれのある会社の行為の類型であり、会社の組合結成・運営に対する干渉行為や諸々の組合弱体化行為などを内容とします(菅野974頁)。

したがって、不利益取扱の不当労働行為と同時に評価されることも多いです。

なお、支配介入が成立するためには、労働組合の組織・運営を現実に阻害したり、影響を与えたという結果発生が必要となるわけではありません。

例えば、組合の脱退勧奨が実施された場合、実施されたこと自体で支配介入が成立することになり、実際に当該従業員が脱退したかどうかは支配加入の成否に影響しません。

 

支配介入の意思

支配介入の不当労働行為が成立するにあたり、支配介入の意思が必要であるかどうかは、例学説ともに見解が分かれています。

支配介入の不当労働行為が成立するには、具体的な行為(反組合的行為)の意思が必要であり、その意思の有無の判断は、諸々の間接事実を総合して判断されることになるとする見解(菅野977頁)、支配介入のそれ自体が不当労働行為という評価を含んだ概念であるから、そこでは会社の主観は支配介入の概念の中に取り込まれると考え、支配介入の存在が認められれば、直ちに不当労働行為が成立するとする見解(西谷198頁)が有力となっています。

この点、東京地労委は、日本アイ・ビー・エム事件(東京高判平17.2.24労判892号29頁)において、支配介入の不当労働行為の成立のためには、会社側に不当労働行為意思が存することが必要であるが、この不当労働行為意思は、直接に組合弱体化ないし具体的反組合的行為に向けられた積極的意図であることを要せず、その行為が客観的に組合弱体化ないし反組合的な結果を生じ、又は、生じるおそれの認識、認容があれば足りると判断しています。

 

支配介入に該当するケース

  • 労働組合の結成に対する支配介入
  • 労働組合の運営に対する支配介入
  • 配転や出向など従業員の不利益な処分ではないと思われる処分であっても、組合活動に支障がでたり、組合弱体化に結び付くような場合
  • 会社が継続して実施していた労働組合に対する便宜供与を中止、合理的な理由なく労働協約を更新しない・解約した場合

労働組合の結成に対する支配介入としては、組合結成の動きに対して威嚇・非難した場合はもちろん該当しますし、結成大会当日にあえて就労を命じた場合にも該当する場合があります。

また、労働組合の運営に対する支配介入としては、組合員の解雇・配転・出向、正当な組合活動や争議行為に対する懲戒処分、組合の幹部に対する買収や供応、別組合結成のための援助などがあげられます。

配転や出向など一見すると必ずしも従業員の不利益な処分ではないと思われる処分であっても、当該処分によって組合活動に支障がでたり、組合弱体化に結び付くような場合には、支配介入の不当労働行為が成立することになります。

さらに、会社が継続して実施していた労働組合に対する便宜供与を中止することや、合理的な理由なく、労働協約を更新しなかったり、解約した場合にも不当労働行為が成立することがあります。

 

 

経費援助

労組法7条3号は、使用者が組合の運営のための経費を援助することを禁止しています。

この趣旨は、会社が組合の経費を負担することで、組合に対する影響力を持つことを防止することにあります。

もっとも、全ての経費援助を否定しているわけではありません。

労組法7条3号但書では、
「労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すこと」、
「厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄付」、
「最低限の広さの事務所の供与」を除くと規定しています。

前述したように、労組法が会社の組合に対する経費援助を原則禁止しているのは、会社が組合に対して影響力を持つことを防止することにありますから、この趣旨に反しない限りで、同号但書に記載された経費援助も許容されるべきと考えられています。

経費援助が不当労働行為に該当するかどうかについては、それが現実に労働組合の自主性を喪失させる可能性があるか否か、会社がいかなる意図に基づいてそうした援助を行っているのか等の事情を考慮して実質的に判断すべきであると考えられています(西谷204頁)。

経費援助が不当労働行為に該当しない場合に、それを会社が一方的に打ち切った場合には、その打ち切りが不当労働行為と判断される可能性があります。

 





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