勝手に貼られた労働組合(ユニオン)のビラを撤去してもいいですか?
従業員が会社の掲示板に労働組合(ユニオン)に関するビラを掲示しています。
撤去しても法的に問題はないでしょうか?
会社に施設管理権があるので、特段の事情がない限りは撤去しても問題ありません。
もっとも、掲示板の利用を認めないことが、施設管理権の濫用に該当するような場合には、支配介入の不当労働行為が成立します。
組合の会社施設の利用
労働者が、組合活動の一環として掲示物を貼付したり、ビラを配るということがあります。
もちろん組合活動は、労組法により保護を受けますから、会社がそれを理由として懲戒処分などの不利益な処分をすれば不当労働行為が成立します。
もっとも、組合活動であれば全て保護を受けるのかといえばそうではありません。あくまで労組法で保護を受けるのは、正当な組合活動です。
したがって、会社の掲示板に無断で掲示物を貼付したり、あるいは会社内で組合の主張を記載したビラを配布するような場合には、会社の施設管理権との関係で、その正当性が問題になり、仮に正当性がない組合活動であると評価されれば、当該組合活動を停止させる会社の措置が不当労働行為に該当することは基本的にありません。
したがって、従業員が組合活動として会社の掲示板にビラを貼付した場合に、それを中止させるために撤去することが不当労働行為に該当するかどうかは、その貼付が組合活動として正当性を有するかどうかにかかってきます。
会社の施設管理権と組合活動
組合活動は労組法により保護されていますが、会社内で組合活動を行う場合には、不可避的に会社の施設を利用することになります。会社内の施設の管理権は当然会社にありますから、その限度で組合活動も制限を受けることになります。
では、会社内でのビラ貼り行為が正当な組合活動といえる場合は如何なる場合でしょうか。この点について、判例・学説は見解が分かれています。
国鉄札幌運転区事件(最三小昭54.10.30民集33巻6号647頁 労判329号12頁)で、最高裁は、
「労働組合又はその組合員であるからといって、使用者の許諾なしに右物的施設を利用する権限をもっているということはできない」として、会社内の施設の管理権は専ら会社に帰属することを明示した上で、
「労働組合又はその組合員が使用者の許諾を得ないで叙上のような企業の物的施設を利用して組合活動を行うことは、これらの者に対しその利用を許さないことが当該物的施設につき使用者が有する権利の濫用であると認められるような特段の事情がある場合を除いては、職場環境を適正良好に保持し規律のある業務の運営態勢を確保しうるように当該物的施設を管理利用する使用者の権限を侵し、企業秩序を乱すものであって、正当な組合活動として許容されるところであるということはできない。」
と判示しました。
このように、最高裁判例では、労働組合やその組合員は、原則として会社の許諾がない場合には、会社施設を利用した組合活動は許されず、許諾をしないことが会社の権利濫用に該当するような特段の事情がある場合以外は、組合活動の正当性は認められないと判示しました。
したがって、この最高裁判例の枠組みで考えると、従業員が労働組合の主張等が記載されたビラを会社の掲示板に無断で貼付しているような場合には、貼付行為は原則として正当性のない組合活動と評価され、ビラを会社が除去したとしても不当労働行為には該当しません。
もっとも、この最高裁判例は、学説から強く批判されています。
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