ユニオン活動のための従業員の会議室利用は拒否できますか?
従業員が労働組合(ユニオン)の活動のために会議室の利用許可を求めてきました。
拒否しても法的に問題ないですか?
会議室を利用させないことが、施設管理権の濫用と評価されれば、不当労働行為に該当します。
問題の所在
労働組合が集会等のために、会社施設を利用している場合に、それを中止させ、使用を拒否することは労働組合の団結権に影響を及ぼすことになります。
そこで、会社が会社施設の利用を中止あるいは拒否することが、不当労働行為の支配介入に該当するのではないか問題となります。
判例・学説の見解
組合活動と会社の施設管理権の問題は、判例と学説で見解が異なります。
学説においては、企業別組合では事業の施設を利用することが組合活動上不可欠であるので、団結権ないし組合活動権に基づき企業施設を一定限度で利用する権限を有し、使用者はこの利用を受任する義務があるとする受忍義務説(西谷235頁~)、労働組合には企業施設の利用権はないが、その活動が業務運営上又は施設管理上の実質的な支障を生ぜしめない限りは使用者の許諾を得ていないという違法性が阻却されるとする違法性阻却説(菅野929頁)等があります。受忍義務説ではもちろんのこと、違法阻却説でも、会社の許可なく会社施設を利用して集会などをしたとしても、正当性のある組合活動として認められる場合が多いと言えます。
しかし、判例は、労働組合や労働者に会社施設の利用権を否定しており、原則として会社施設の利用には許可が必要であり、許可がない場合には、その組合活動の正当性は認められないとしています(国鉄札幌運転区事件 最三小昭54.10.30民集33巻6号647頁 労判329号12頁)。
この判例では、会社が施設を利用させないことが、施設管理権の濫用と認められるような特段の事情がある場合には、組合活動の正当性を認める旨も判示していますが、あくまで原則は許可がなければ正当性は認められず、特段の事情が認められる場合はそれほど多くないと考えられます。
特段の事情が認められるのは、例えば、組合の施設利用が慣行化しており、それを中止するにあたり相当の理由がないような場合が考えられます。
【参考裁判例】池上通信機器事件 (東京高判昭59・8・30労判439号37頁)
争点
組合集会のための食堂の利用の適否が問題となり、食堂使用許可願いの不許可、強行的な食堂利用に対する中止命令、処分の警告等が支配介入に該当するかが争いになりました。
判旨概要
裁判所は、組合に施設管理権がないこと、組合が食堂利用について、会社と真摯に話し合いをせずに強行したこと等を理由として、不当労働行為の支配介入を認めませんでした。
【参考裁判例】総合花巻病院事 (最一小判昭60・5・23)
この事案では、組合の施設利用が慣行化されていたにもかかわらず、使用者が、労使関係が悪化した時に、合理的な理由なく労働組合が施設を利用することを拒否したことに着目し、不当労働行為の支配介入を認めています。
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