組合休暇とは|労働組合活動のための休暇取得を拒否できる?

執筆者
弁護士 鈴木啓太

弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士

従業員が組合活動のための休暇を要求してきた場合、組合休暇が労働協約等により制度化されていなければ、拒否したとしても基本的に不当労働行為には該当しません

ただし、組合休暇が労働協約等により制度化されている場合には、不当労働行為に該当する可能性がありますので注意が必要です。

解説

組合休暇・組合専従

組合休暇とは、組合業務を行うために与えられる休暇のことです。

組合専従とは、会社との雇用関係においては、休職扱いとして労働組合の業務のみに専念することです。

法律上、使用者が労働者に組合休暇を付与したり、組合専従を認めなければならない義務はありません。

もっとも、組合規模が大きくなると事務的な業務量も増大するため労働協約等によって、組合休暇や組合専従の制度を定められることがあります。

使用者としては、組合休暇や組合専従を認める義務はありませんが、それが労働協約などで一旦制度化され、協約に基づき組合休暇や組合専従の申入れをされた場合には、締結した協約の内容にもよりますが、基本的に理由なく拒否することは許されません。

拒否した場合には、組合の運営に支障をきたしたとされ、当該拒否が支配介入の不当労働行為と評価される場合があります。

 

 

参考裁判例

都城郵便局事件(最一小判昭51.6.3判時817号39頁)は、組合休暇の不承認を不当労働行為とした事案です。

この事案では、郵政省の就業規則に組合の大会会議に出席する場合、その他組合の業務を行う場合には予め組合休暇付与願いを提出し許可を受ければ、勤務時間中であっても組合活動をすることができると定められていました。

しかし、組合休暇を申し入れた者の出席する委員会が職場闘争をもたらす可能性のある委員会であると判断し、組合休暇を不承認としました。

この不承認が支配介入の不当労働行為に該当するか争われた事案です。

最高裁は、組合休暇の制度が組合活動に対する便宜供与の一種であることを認定しつつ、
「便宜供与であることから直ちに、右組合休暇が職場における労使関係が正常な状態にある場合に限って与えられるものであり、組合の闘争によって正常な労使関係が失われている時にはいかなる組合活動であっても一切これを与えないことが当然に許されるものであるとは、解しがたい」
と判示し、支配介入の不当労働行為の成立を認めました。

 

実務上の注意点

解説する弁護士のイメージイラスト組合休暇や組合専従の制度は、組合活動に対する便宜供与ですから、協約などによって制度化されていない場合には、拒否したとしても基本的に不当労働行為は成立しません。

労働者は職務専念義務を負っていますから就業時間中は、業務の遂行のみに専念しなければならないのです。

もっとも、一旦制度化され運用されるようになった場合には、協約の規定内容にもよりますが、申し入れを拒否すると不当労働行為と評価される可能性があります。

したがって、組合休暇や組合専従を制度化する労働協約締結の申入れが組合からあったとしても、実際に組合休暇の申請がされた場合に生じうる業務上の支障を十分考慮し、協約を締結するにしても、その規定の内容については、後に紛争が発生しないよう注意する必要があります。

 

 





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