不当労働行為と認定されたら解雇は無効になりますか?

執筆者
弁護士 鈴木啓太

弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士

質問マーク従業員を解雇したことが、裁判により不当労働行為と認定されました。

この認定によって解雇は無効なってしまいますか?

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弁護士の回答

弁護士牟田口裕史イラスト

不当労働行為制度を定める労組法7条は、判例上、強行法規と解釈されているので、当該解雇が不当労働行為であると認定されれば、私法上、解雇は無効になります。

 

 

解説

不当労働行為の私法上の効果

刑事罰のイメージ画像不当労働行為の救済の手段として、労働委員会が設置されており、労働委員会は、使用者の行為が不当労働行為であると判断した場合には、救済命令を発することができます。この救済命令に従わない場合には、刑事罰(一年以下の禁錮もしくは100万円以下の罰金又はその両方)が予定されており、その実効性が担保されています。

もっとも、この救済命令は、あくまでも行政による解決策を提案するものであり、救済命令によって使用者に何かを義務付けたり、労働者に権利を付与したりといった効力はありません。

また、不当労働行為がされた場合、私法上の行為についていかなる効果を及ぼすのか労組法には何ら規定がされていません。

この問題に関して、医療法人新光会事件(最三小判昭43・4・9民集22巻4号845頁)は以下のように判示しています。

【参考判例】医療法人新光会事件 最三小判昭43・4・9(民集22巻4号845頁)

「不当労働行為たる解雇については、旧労働組合法(昭和20年12月22日法律第51号)においては、その11条によりこれを禁止し、33条に右法条に違反した使用者に対する罰則を規定していたが、現行労働組合法(昭和24年6月1日法律第174号)においては、その7条1号によりこれを禁止し、禁止に違反しても直ちに処罰することなく、使用者に対する労働委員会の原状回復命令が裁判所の確定判決によって支持されてもなお使用者が右命令に従わない場合に初めて処罰の対象にしている(同法28条)。しかし、不当労働行為禁止の規定は、憲法28条に由来し、労働者の団結権・団体行動権を保障するための規定であるから、右法条の趣旨からいつて、これに違反する法律行為は、旧法・現行法を通じて当然に無効と解すべきであって、現行法においては、該行為が直ちに処罰の対象とされず、労働委員会による救済命令の制度があるからといって、旧法と異なる解釈をするのは相当ではない。」
病院のイメージ画像このように、最高裁は、労組法7条を強行法規と解し、同条違反の行為を私法上も無効であることを明確にしました。したがって、裁判所によって、労働者の解雇が不利益取扱の不当労働行為であると認定され確定した場合には、当該解雇は無効となります。
この無効は、あくまで労組法7条が強行法規であるがゆえによるものですから、労契法16条による無効とは別個の無効原因とされています。
また、不当労働行為に該当するという評価は、不法行為上の違法性の根拠にもなります。ただし、不法行為に基づく損害賠償請求をするには、労働者において、当該不当労働行為につき使用者に故意・過失があること、損害が発生していることを立証する必要があります。

このように、労組法7条は、強行法規として私法上の効果がありますが、あくまで同条に反する行為を禁止し無効とすることにとどまり、それを超えてさらに、使用者に対して具体的な請求権が労働者に発生するわけではありません。

無効のイメージイラストすなわち、団体交渉の拒否が不当労働行為に該当するとして、私法上も違法であるとの評価を受けたとしても、団体交渉請求権なるものが認められるわけではありません。ただ、団体交渉を拒否されたことに対する損害賠償請求や団体交渉を求めうる地位の確認を請求することは可能です。

以上のように、会社の行為が不当労働行為と評価された場合には、その行為の効力は無効とされ、その事実行為について不法行為上違法の評価を受けますから、企業としては、不当労働行為が疑われる事案については慎重な行動が求められます。

 

 





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