労組法上の労働組合ではない合同労組からの団体交渉は拒否してもいいでしょうか?
利益代表者が加入している労働組合から団体交渉の申し入れがありました。
労組法上の労働組合ではないと思うので、団体交渉を拒否しようと思っているのですが、法的に問題ないでしょうか?
労働条件の維持改善という目的を果たしている団体であれば、労働基本権を享受できる可能性があるので、慎重な対応が必要です。
労組法上の労働組合
労組法上の労働組合とは、「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体」をいいます(労組法2条)。
ここでいう「自主的に」とは、組織面での自主性と、財政面での自主性が必要とされています。
すなわち、組織面での自主性では、役員や使用者の利益代表者(監督的地位にある労働者)が加入する労働組合は、労組法上の労働組合とはなりません(労組法2条但書1号)。
また、財政面での自主性では、団体の運営のための経費の支出につき使用者の経理上の援助を受けるものは、原則として労組法上の労働組合となりません(同但書2号)。
これらの要件を満たしてはじめて労組法上の労働組合といえるのです(Q&A『労働組合とはどのような団体ですか。また、労働組合が存在しない会社でも労働組合法を知っておく必要があるのですか。』)。
そして、労組法上の労働組合に該当し、労組法所定の資格審査にパスすると、労組法上の救済を受けることが可能となります。
例えば、使用者に対して、団体交渉を申し入れたが、使用者が交渉を拒否した場合、不当労働行為として、労働委員会に対して、救済を申し立てることが可能です。
労組法上の労働組合に該当しない場合
では、例えば、利益代表者が加入している労働組合からの団体交渉の申入れに対しては、これを拒否しても問題はないでしょうか。
まず、注意すべきは、仮に労組法上の労働組合に該当しない場合でも、それは労組法上の特別な保護(労働委員会への救済申し立て)が受けられないというだけであり、その存在自体を否定されるわけではありません。
また、仮に労組法上の労働組合に該当しなくても、その団体が労働条件の維持改善という目的をきちんと果たしていれば、憲法28条の勤労者の団結として、法的に保護されると解されています。
したがって、当該団体が使用者から団体交渉を拒否されたとき、労組法上の救済手続は利用できないとしても、被った損害については一般法たる民法の規定に基づき賠償を求めることは認められます。
また、当該団体が争議行為等の正当な団体行動を行った場合、その結果については損害賠償責任や刑事責任を負うことはありません。
これは、民事免責や刑事免責は、憲法で保障されているものであり、労組法によってはじめて認められるものではないからです。なお、民事免責や刑事免責については労組法上も規定がありますが、これは憲法上の権利を確認したものと解されます。
以上から、ある団体が労組法上の労働組合に該当しなかったとしても、労働条件の維持改善という目的を持つかぎり、その団体は少なくとも憲法が認める団結に該当し、労働基本権を享受できる可能性があります。
その他の関連Q&A
-
1
ユニオン・合同労組とは? -
2
不当労働行為とは? -
3
労働委員会の手続等 -
4
組合活動の妥当性 -
5
団体交渉への対応方法 -
6
労働協約とは? -
7
争議行為への対応 -
8
紛争の解決制度