進展の見込がない団体交渉にも応じ続けなければいけませんか?
1年以上前から団体交渉を多数回にわたって開催してきましたが、双方の主張が平行線をたどっており、交渉が成立しそうにありません。
このような場合でも、労働組合から要求があれば、毎回団体交渉に応じなければならないでしょうか。
進展する見込みがないような場合、団体交渉を打ち切ることも可能です。
誠実交渉義務
使用者は、労働組合からの団体交渉申入れがあった場合、義務的交渉事項についての申入れであれば、交渉に応じる義務があります(労組法7条2号)。
義務的交渉事項について、正当な理由なく団体交渉に応じない場合、不当労働行為となります。
また、使用者は、団体交渉に対して、単に応じるだけではなく、誠実に交渉に応じなければなりません。これを誠実交渉義務といいます。
団体交渉の打切り
使用者が誠実に団体交渉に応じていても、労使双方の主張の隔たりが大きく、平行線をたどることがあります。
例えば、労働組合側が解雇された組合員の解雇撤回を求めて団体交渉を長期間にわたって開催してきた一方、使用者側が解雇撤回を認めないような場合です。このような場合、団体交渉の打ち切りが許されるかが問題となります。
この点、使用者の団体交渉応諾義務は、あくまで「交渉」に応じる義務であって、労働組合の「要求」に応じる義務ではありません。
また、誠実義務についても、進展がないにもかかわらず、時間的限度無しで交渉に応じる義務まではありません。
したがって、労使双方が自己の主張や説明を尽くし、これ以上進展する見込がない場合、使用者による団体交渉の打ち切りは認められると解すべきです。
なお、このような問題について、次の参考判例も団体交渉の打ち切りを可能と判示しています。
【参考裁判例】池田電器事件(最二小判平4.2.14労判614号6頁)
事案の概要
労働組合が、会社に対し、会社再建と解雇の撤回を求めて団体交渉を申し入れ、昭和62年5月13日から同年7月20日まで5回にわたり、団体交渉が行われた。しかし、会社は会社再建と解雇の撤回は考えられない旨を明言して両者の主張は平行線をたどり、会社がこれ以上交渉をする余地はないとして団体交渉を拒否するに至った。
これに対し、労働組合側は、団体交渉の拒否は不当労働行為に該当するとして不当労働行為救済の申立てを行った。
判旨
この事案において、裁判所は、
「労働組合の会社再建、解雇撤回の要求について、労働組合と会社との主張は対立し、いずれかの譲歩により交渉が進展する見込みはなく、団体交渉を継続する余地はなくなっていたというべきであるから、会社が団体交渉の継続を拒否していたことに正当な理由がないとすることはできない」
と判示し、団体交渉の打ち切りを認めた。
時の経過による団体交渉の再開
団体交渉打ち切り後、それから相当期間が経過した場合に、再度、労働組合が団体交渉を申し入れてきた場合、応じなければならないかが問題となります。
このような場合、事情の変更等によって、交渉に進展が見込まれる場合があります。そのため、労働組合が団体交渉を求めてきた場合、基本的には拒否できないと考えられます。
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