労働委員会の手続には毎回会社の代表者の出席が必要ですか?
労働委員会の手続には、毎回会社の代表者が出席しなければなりませんか?
弁護士に依頼していない場合には、必ず会社の人事権、決裁権をもった方(取締役や代表取締役、支店長など)が参加しなければなりません。
弁護士に依頼している場合にも裁判と違い、参加することが望ましいケースが多いです。
労働委員会への出席
労働者や労働組合から救済申立てがなされた場合、使用者としてはこれに対応せざるを得ません。
救済申立てはあっせんや調停手続と違って、最終的には救済命令が下される可能性があるからです。
つまり、使用者が調査期日や審問期日に出席しなかった場合でも労働委員会は手続を進行しなければなりません。
使用者が主張を一切行わなければ、労働委員会としては申立てを行った労働者や労働組合の主張をそのまま事実として受け入れることになり、救済命令が出されることになるでしょう(Q&A「救済命令とはどのような内容の命令ですか?」をごらんください)。
なお、訴訟においては、相手方である被告が答弁書も提出せず、第1回目の期日にも出席しなかった場合には、原告の請求内容をそのまま判決で認容する、いわゆる欠席判決が出されます。
労働委員会の権限
この点に関し、労働委員会は、当事者の申立てがなくても職権で事実の認定に必要な限度において、当事者又は証人に出頭を命じて陳述させることができるとされています(労組法27条の7第1項)。
この出頭命令について、正当な理由なく命令に反して出頭せず又は陳述しない者に対しては、30万円以下の過料に処せられることになっています(労組法32条2の第1号)。
また、証人だけでなく、書証などの物件についても労働委員会には一定の権限が認められています。
すなわち、事件に関係のある帳簿書類その他の物件であって、当該物件によらなければ当該物件により認定すべき事実を認定することが困難となるおそれがあると認められるものの所持者に対し、当該物件の提出を命じ、または提出された物件を留めおくことができるとされています(労組法27条の7第1項2号)。
その際、労働委員会は、個人の秘密及び事業上の秘密の保護に配慮して、物件提出命令を出すかどうかを判断するよう要請されています(同条2項)。
ここでいう「秘密」については、個人的なメモや稟議書の記載内容は該当するといえますが、賃金台帳や人事考課結果を記載した社内文書については、直ちに秘密といえるものではないと考えられています。
物件提出命令についても、証人の出頭命令と同様に、正当な理由なく提出を拒む場合は、30万円以下の過料が科せられます(労組法32条の2第2号)。
使用者参加のポイント
これまで説明したとおり、使用者としては、労働委員会の調査や審問期日に参加しなければなりませんが、問題は誰が参加するかです。
この点、必ず会社の代表者(代表取締役)が出席しなければならないわけではありません。
しかしながら、少なくとも問題とされている行為や事項に関して権限を有している人でなければなりません。
例えば、解雇が不当労働行為として主張されているのであれば、当該組合員に対する人事権を有している人が出席することになるでしょうし、団体交渉中の対応が不当労働行為と主張されているのであれば、当該団体交渉に対応した人が出席することになるでしょう。
弁護士に依頼をしている場合には、弁護士も調査や審問期日に出席しますが、書面でのやりとりが中心の訴訟と異なり、調査期日でもその場で時間をかけて事実確認が行われます(証人尋問に関しては、反対尋問の機会が保障されているため、審問期日においてのみ行われることになります)。
すなわち、調査期日では、裁判所で行われる調停手続と同じく、労使双方が個別に労働委員会の委員から事情聴取されることが多く、1回の期日当たり2時間程度を要します。
そのため、使用者の担当者は弁護士と一緒に出席するケースが多く、特に初回については、必ず出席すべきということになるでしょう。
また、和解の可否が議論になる期日については、その場で細かな調整が図られることになるため、この場合も使用者の方に出席してもらう必要があります。
特に、不当労働行為の成否が争われているケースについては、和解条項の中身が多様になりがち(問題となっていた行為が不当労働行為に当たると確認する文言を入れるかどうかやそれに対する陳謝文言まで条項化するか、申立人が要求していた労働条件について今後の団体交渉の中で協議するという形にとどめるのか、具体的な条件を和解の中で定めるかどうか、など)ですし、その後の労使関係、団体交渉にも大きな影響を与えるものになりますので、専門家である弁護士同席のもと期日に臨むべきです。
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