労働委員会での審理において、企業が注意する点は何ですか?
使用者としては、長期化を防ぐために主張書面といった書面を活用したり、弁護士に依頼して調査や審問期日において主導的な役割を果たしてもらいましょう。
労働委員会での審理の特徴と使用者の注意点
Q&A「労働委員会へ不当労働行為の救済申立をされたらどうなりますか?」で説明したとおり、労働委員会の審理期間は、命令が出される事案の場合、平均でも1年半という期間を要しています。
これは、労働委員会を構成している委員が裁判官のように日々訴訟を指揮しているわけではないということに由来しています。
また、裁判と比べると、申立人となる労働者や労働組合が弁護士を選任するケースが少ないため、争点整理やその後の手続の進行にどうしても時間がかかってしまうという特徴もあります。
労働委員会の審理は1回あたり2時間程度と決して短いとはいえません。したがって、使用者にかかる負担は軽視できないものです。本来的な業務が滞ってしまうこともよくあります。
したがって、労働組合から申し入れられた団体交渉には、第5章で解説している具体的な団体交渉への対応のポイントを押さえて、適切に対応することが紛争予防の観点から非常に重要であることはいうまでもありません。
つまり、無用な救済申立てをそもそも労働組合から申し立てられないように対応しなければなりません。
また、労働委員会に救済申立てがされた場合でも、以下のポイントを押さえて、スピーディーに解決するよう努めることが使用者には求められます。
早期解決のための3つのポイント
①書面を活用すること
期日前に書面を提出せず、そのまま調査や審問期日に出席してしまうと、当日に労働委員会が聴取する内容が多くなるだけでなく、労使双方からどのような主張が出てくるのかが労働委員会も予想できないため、自然と争点の整理や審理計画の策定に支障が出ます。
したがって、答弁書だけでなく、その後も主張書面を作成して、自らの主張や労働者側の主張事実に対する認否を行い、労働者側の主張が不明な場合には釈明を求める必要があります。
②弁護士の活用を検討すること
弁護士を介在させることで、自身の主張を法的に整理した上で主張できるだけでなく、争点整理や証人尋問といった場面で弁護士が日常的に行っている裁判での代理人としての活動を発揮することが可能になります。
③和解による解決も視野に入れておくこと
もちろん、労使ともに譲歩できない部分があるため、和解が困難なケースもありますが、都道府県労委の命令に対して中労委に再審査を申し立てられた場合は、中労委のある東京都まで足を運ばなければなりません。
そうなってくると、地方で活動している使用者にとっては、時間だけでなく交通費や宿泊代などの金銭的な負担も無視できなくなってきます。
本来であれば、売上向上のために使用できる資源を割かなければならないという状況も起こり得ますので、この観点は忘れてはいけません。
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