都道府県の労働委員会の命令が不服です。争う方法はありますか?
都道府県労委の命令に対しては、中労委に再審査の申立てができるだけでなく、裁判所に対して取消訴訟を提起することができます。
再審査請求
(1)都道府県労委の却下決定又は救済ないし棄却命令に対しては、上位機関である中央労働委員会に再審査の申立てを行うことができます(労組法27条の15)。
再審査申立てを行えば、都道府県労委の命令は確定しませんので、制裁(くわしくはQ&A「労働委員会からの救済命令に反した時、罰則はありますか?」をごらんください)を受けることはありません。
(2)再審査の申立ては、都道府県労委の命令の交付を受けたときから15日以内に行わなければなりません。
なお、天災その他の事情で15日以内に再審査の申立てをしなかったことについてやむを得ない理由がある場合には、その理由がやんだ日の翌日から起算して1週間以内に申し立てれば適法な申立てとなります。
再審査を行うことができるのは、都道府県労委で不利益な処分を受けた当事者です。ただし、命令の根拠となっている理由中の判断だけの不服申立てはできません。
したがって、救済申立てが棄却されたものの、その理由中の判断に納得がいかない使用者は、救済申立てが棄却されている以上、再審査の申立てをすることができません(GABA事件(中労委平22年10月6日別冊中労1409号20頁)。
(3)手続としては、都道府県労委を経由して、もしくは中労委に直接再審査申立てを提出する方法により行います(労委規則51条1項)。
再審査申立書には、申立人・被申立人の氏名、住所、申立日、不服の要点とその理由を記載するとともに、都道府県労委の命令書の写しを添付します(同条2項)。
取消訴訟
(1)都道府県労委又は中労委の命令に対しては、行政処分として行政事件訴訟法に基づいて、その取消訴訟を提起することができます。
この場合、訴訟の相手方(被告)は行政処分を行った行政庁(労働委員会)が属する国又は公共団体となります(行訴法11条)。したがって、都道府県労委の命令に対する取消訴訟は当該都道府県が、中労委の命令に対する取消訴訟は国が被告となります。
(2)使用者が都道府県労委や中労委の命令に不服がある場合、命令が交付されてから30日以内に命令の取消しの訴えを提起することになります(労組法27条の19)。
なお、中労委に再審査を申し立てた場合には、都道府県労委の命令に対して取消訴訟を提起することはできず、中労委の命令に対してのみ取消訴訟を提起することができます。
他方、労働者や労働組合が取消訴訟を提起する場合には、使用者と異なり、通常の行政訴訟と同じく、処分があったことを知った日から6か月以内に提起すれば適法になります(行訴法14条1項)。
また、取消訴訟を提起した場合でも救済命令の効力は停止されません(行訴法25条1項、29条)。
再審査請求と取消訴訟の関係
労組法は27条の19第1項で「使用者が都道府県労働委員会の救済命令等について中央労働委員会に再審査の申立てをしないとき」は取消訴訟を提起することができると定めています。
したがって、使用者は都道府県労委の命令に対して、中労委への再審査申立てか取消訴訟のいずれか一方のみを行うことができます(菅野1081頁)。
他方、労働者や労働組合については、上記規定が準用されていないため、再審査申立てと取消訴訟の両方を行うことができます。
都道府県労委の命令に対して、使用者側が取消訴訟を、労働者側が再審査申立てを行っている場合に、当該命令が取消訴訟において支持され、確定された場合には、中労委は再審査をすることができなくなるため、労働者側の再審査申立ては却下となります(労組法27条の16)。
この点、藤田運輸事件(東京高判平15年4月23日判時1830号146頁)では、解雇を不当労働行為として原職復帰を命じつつ、バックペイについては認めなかった都道府県労委の命令に関して、使用者側が取消訴訟を、労働者側が再審査申立てを行い、先に取消訴訟が使用者側敗訴で確定しました。
そこで、中労委が再審査申立てを却下しましたが、この却下決定に対して、労働組合はバックペイが命じられていないのに却下するのは不当であるとして取消訴訟を提起しましたが、東京高裁は中労委の判断を支持しています。
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