社員のうつ病を会社のせいにするユニオンとの団体交渉を行った福岡市のIT企業T社
業種 | IT |
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従業員数 | 20人程度 |
ユニオンの要求内容 | 慰謝料の請求 |
団体交渉実施回数 | 1回 |
解決までの期間 | 3か月程度 |
状況
T社は福岡市内でウェブ関連のIT事業を営む会社です。
Yさんは、2年ほど前にT社に正社員として入社しました。
Yさんは、真面目な性格でしたが、業務の処理スピードが遅く、周りの社員に迷惑を掛けていました。
ある日、Yさんから突然、退職したいとの通知文書が届きました。
T社の社長は念のために、Yさんに連絡しましたが、特に理由も言わなかったので、自己都合退職として処理しました。
それから数ヶ月して、労働組合(ユニオン)からYさんが加入した旨の通知文書が届きました。
また、同文書には、Yさんが退職した理由はT社の過酷な勤務環境が原因だったこと、慰謝料を請求すること、1週間以内の団体交渉の開催を求めることなどが記載されていました。
驚いた社長は、当事務所に相談に訪れました。
当事務所の労働弁護士のサポート
当事務所は、会社側労働専門の弁護士2名を本件の担当弁護士として指定しました。
弁護士は、労働組合(ユニオン)に対して、受任通知を発出し、今後、直接T社と接触しないように求めました。
そして、団体交渉については、準備のために1周間以内には開催できないため延期を申し出ました。
弁護士は、社長や状況をよく知る社員と打ち合わせをして、団体交渉に臨みました。
団体交渉の席で、労働組合(ユニオン)からはYさんがうつ病に罹ったことの証明資料として診断書が開示されました。
また、慰謝料として 300万円を請求してきました。
これに対して、弁護士は、仮に、Yさんがうつ病だったとしても、会社の業務との相当因果関係を欠くと反論しました。
団体交渉は双方とも主張を譲らず、1回目の交渉は終了しました。
団体交渉の後、弁護士は、労働組合(ユニオン)の担当者に直接電話をかけ、担当者間での交渉を継続しました。
労働組合(ユニオン)は、当初、金銭を強く要求していましたが、しだいに自分たちの要求が通らないと感じるようになりました。
弁護士は、金銭は一切支払わないが、代わりに、退職理由やYさんの病気について一切口外しないことを約束するという条件を提示しました。
粘り強い交渉の結果、労働組合(ユニオン)は金銭の要求を取り下げ、示談が成立しました。
補足説明
会社の業務に起因して従業員がメンタル不調となった場合、安全配慮義務違反として、会社に賠償義務が生じることがあります。
しかし、会社に安全配慮義務違反があっことや、従業員の損害の発生等について、立証責任は従業員側にあります。
本件では、T社には特に安全配慮義務違反となるような事情はありませんでした。
すなわち、Yさんのうつ病は、会社とは関係がない可能性が高かった事案でした。例えば、Yさんの持病、性格や私生活上の出来事が原因だったと考えられます。
弁護士は、労働組合(ユニオン)の担当者に対して、仮に裁判を起こしたとしても、立証が難しく、慰謝料の支払い義務が認められないと強く主張しました。
このような交渉が功を奏したと考えられます。
団体交渉の対応については、当事務所の労働弁護士までお気軽にご相談ください。