裁判所から未払残業代を求める訴状が来ました。今後どうなりますか?
労働訴訟は他の事件と比べると、長期化する傾向にありますが、和解で解決する可能性もあります。
労働訴訟の内容
民事訴訟は、原告が訴状を裁判所に提出することにより開始されます。
訴状には、原告が求める内容や言い分が記載されています。労働事件の場合、原告の求める内容としては、解雇の撤回(雇用契約上の地位確認)、未払い残業代の請求が典型です。
解雇の撤回を求める場合は、未払賃金も合わせて請求されるのが通常です。これは、仮に、解雇が無効の場合、労働者が労務を提供できないことについて、使用者側に落ち度があるといえるため、労働者が復職するまでの間の賃金も支払うべきと判断される可能性があるからです。
他に、セクハラを受けたことによる慰謝料請求や、使用者の安全配慮義務違反による損害賠償請求等も見られます。
労働訴訟の流れ
労働者側の訴状に対して、会社側は、答弁書を提出します。
答弁書には、労働者の請求や言い分について、認めるか否か、また、使用者側の反論等を記載します。例えば、今回のような場合、労働者の求める残業代請求を認めるか、それとも否定するか、また、使用者側の反論としては、確かに、時間外労働はあったが、すでに支払済みである、などが想定されます。
使用者側の主張に対して、労働者側は次回の第2回期日までに、再反論を書面(このような書面を準備書面といいます。)で行います。
また、その準備書面に対して、使用者側は、第3回期日までに再々反論を書面で行ったりします。
このように通常、民事訴訟においては、労働者側・使用者側がそれぞれの主張を繰り返し行います。
裁判所は当事者の主張から当該事件の争点と証拠の整理を行います。そして、当事者間に争いがある事実については、証拠資料(書証)の取り調べ、証人尋問、当事者尋問などの証拠調べを行い、事実認定を行います。
そして、最終的に裁判所の判断として判決を言い渡します。
労働訴訟の傾向
平均審理期間
近年、労働訴訟の平均審理期間は長期化しています。
統計(裁判の迅速化に係る検証に関する報告書)によると平成26年における労働関係訴訟の平均審理期間は、14.3か月となっています。つまり、解決までは1年以上もの長期間を要します。もちろん、平均審理期間なので、案件によって長短があります。
しかし、全体の民事訴訟の場合、平均審理期間が8.5か月であることから極端に長い傾向にあるといえます。
また、平均期日回数についても、全体の民事訴訟の場合が4.7回であるのに対して、労働関係訴訟の場合は8.3回と顕著に多い状況です。
このように長期化するのは、労働訴訟が争点や証拠が多岐にわたり複雑化する傾向があること等が影響していると思われます。
和解による解決
裁判とはいっても、実際には当事者の譲歩による和解によって解決することは多く、これは労働事件にも当てはまります。むしろ、労働事件は他の民事訴訟よりも和解で解決する確立が高い傾向にあります。
すなわち、統計(最高裁判所事務総局・裁判の迅速化に係る検証に関する報告書・第6回平成27年7月10日公表)によれば、判決まで行くのは、全体の民事訴訟の場合が43.6パーセントであるのに対して、労働関係訴訟の場合は32パーセントです。
他方、和解で解決するのは、全体の民事訴訟の場合が34.5パーセントであるのに対して、労働関係訴訟の場合は53.7パーセントとなっています。
以上から、労働事件は比較的に長期化すること、和解での解決が多いという特徴があげられます。
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