団体交渉前のストライキが許されるのでしょうか?
労働組合(ユニオン)が何らの団体交渉を行っていないのに争議行為を行ってきました。
団体交渉前のストライキは許されるのでしょうか?
抗議ストのような場合を除いて、労働組合が何らの団体交渉を行っていない状態で争議行為を行うことは許されず、正当な争議行為とはいえません。
団体交渉を経ない争議行為
争議行為の正当性の判断にあたっては、争議行為に至る経過、すなわち手続面が判断要素の一つになります。(くわしくはQ&A「争議行為の正当性はどのように判断されるのですか?」をごらんください。)
今回のケースの場合、使用者としては団体交渉を行っておらず、労働者や労働組合との協議が一切ない状態で争議行為を行われてしまうので、手続的に許される行為なのかが問題となります。
この点、争議行為が認められた趣旨を、団体交渉を円滑に進める、または促進するためのものであると考えれば、正当な争議行為の開始といえるためには、使用者が労働者の具体的要求について、団体交渉そのものを拒否したか、あるいは団体交渉の中で具体的な要求事項には応じられないと回答したことが原則として必要です。
したがって、今回のように団体交渉を一切行っていない状態でなされる争議行為は、使用者がそもそも団体交渉には応じられない旨を通知していない限り、正当性はないということになります。
ただし、抗議ストの場合、団体交渉が行われない状態で争議行為を開始するケースもあります。(抗議ストについて、くわしくはQ&A「企業の経営事項に関するストや抗議ストは許されるのですか。」をごらんください。)
もっとも、通常、抗議ストの場合には、労働組合の意向として使用者に今後同様の言動を行わないことを求めるという要求事項が含まれていると考えられます。
したがって、抗議ストと評価できる場合には、例外的に団体交渉を経ていなくても正当な争議行為と認められる可能性があります。
【参考裁判例】西神テトラパック事件 神戸地判 平10年6月5日(労判747号64頁)
「労働組合の争議権は、団体交渉における具体的な折衝を進展させるために保障された権利であり、団体交渉を経ない段階(団交拒否も含む)で行われた争議行為には正当性を認めることができないと解するのが相当であるところ、本件争議行為のうち六月一一日からの残業拒否闘争(六月一二日の団体交渉で三六協定破棄通告は撤回されている。)については、前記認定のとおり団体交渉を経ずに行われたものであるから、違法な争議行為であると認めざるを得ない。
しかし、六月二三日の三六協定破棄通告による残業拒否闘争及び六月二四日からのストライキについては、前記認定のとおり同月一二日からの団体交渉を経ていることから、違法な争議行為ということはできない。」
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