争議行為の正当性はどのように判断されるのですか?
争議行為の正当性については、その主体、目的、手続、手段といった観点から判断されています。
争議行為の正当性
主体
ここでの問題は、争議行為を行う主体として、適切な地位を有しているかという問題です。
一般的な基準は、争議権が保障された趣旨から団体交渉の主体となりうる者かどうかということになります(菅野910頁)。
主体に関しては山猫ストと呼ばれるストライキの正当性が問題になります。山猫ストとは、組合員の一部の集団が組合所定の機関の承認を得ずに独自に行うストライキをいいます。
この点に関しては、こちら「企業の経営事項に関するストライキも許されるのですか?」でも取り上げた明治乳業事件判決の中で以下のとおり述べられています。
「労働組合法が、労働組合が結成されている場合には、労使関係は労働組合を通じて規律していく事を前提としていることから考えると、団体交渉の主体たりえない、即ち労働協約を締結する能力のない、労働組合の一部分にすぎない団体が、組合本部の意思に反して独自にストライキを行うことは許されないというべきである。さもないと、使用者としては、団体交渉によつて問題を解決することもできない相手方によるストライキを受任しなければならず、不当な不利益を強いられることになるからである。本件において、支部は、組合本部とは独立に会社と団体交渉を行い、労働協約を確認する能力をゆうしていなかつたのであるから、結局のところ、本件ストライキはいわゆる山猫ストに該当する違法なものと評価すべきである。」
目的
Q&A「政治目的の争議行為も許されるのでしょうか。」や、Q&A「企業の経営事項に関するストや抗議ストは許されるのですか。」で説明したとおり、正当な争議行為と認められるかどうかは、当該行為の目的が何であるかも考慮対象となります。
すなわち、争議行為が団体交渉上の目的遂行のために行わなければなりません。上記で解説した経営事項に関するスト、抗議スト以外にも同情ストというストライキが問題になります。
同情ストとは、使用者に対する要求の実現ではなく、他の労働者の要求の実現を支援する目的で遂行するストライキのことをいいます。
これに対しては、正当な争議行為とはいえないという見解が有力ですが(菅野912頁)、原ストで争われている労働条件と同情ストを行っている労働者の労働条件とが直接、間接的に関連している場合には、同情ストも憲法28条で認められるという見解もあります(西谷417頁)。
手続と手段
仮に、争議行為を行える主体であり、目的も組合員の労働条件に関する要求事項の実現という正当な目的であったとしても、いつでも、そしてどのような行為でも正当性が認められるわけではありません。
この点に関して、基本的に争議行為の手段として組合員の労務の提供を完全に停止する、あるいは、怠業のように不完全な形で提供するという消極的なものにとどまる限りは、正当性が認められると考えられます(菅野916頁)。
しかしながら、使用者の設備、備品を破壊したり、争議行為に対抗する管理者に暴力を振るうといった有形力の行使を伴う場合、正当性が認められないことになります。
また、ピケッティングについても、単純な労務の不提供にとどまらず、一定の行動を伴う点で、正当性が認められるか厳しい目で判断されています。(ピケッティングについては、Q&A「ピケッティングとは何ですか?」をご覧ください。)
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