ストライキをしている組合員の給与をカットできますか?
ストライキやサボタージュしている組合員がいます。
彼らの給与をカットしたいのですが、法的に可能でしょうか?
ノーワークノーペイの原則から、ストライキを行った労働者の賃金をカットすることは問題ありません。
ノーワークノーペイの原則
ストライキを行った組合員は、ストライキ期間中は労務を提供していません。
そもそも使用者の支払う賃金は、労務提供に対する対価として支払われるものですから、対価関係にある労務が提供されていない以上、そこに対応する賃金を支払わないという対応を使用者がとることは問題ありません。
この原則をノーワークノーペイの原則といい、賃金全額払いの原則を規定する労基法24条にも違反しません。
ただし、完全月給制の場合には、給与カットはできません。
また、裁量労働制の場合には、時間配分や業務遂行方法が労働者に委ねられているため、ストライキによる労務不提供の時間やその程度がどの程度存在するのかの立証が非常に困難となります。
したがって、あらかじめ就業規則や労働協約でストライキの場合の報酬の認定方法について規定しておくことがリスク予防につながります。
賃金カットの範囲
ノーワークノーペイの原則から賃金カットが可能だとしても、どの部分の賃金カットができるかについては、具体的な判断が必要になります。
すなわち、基本給以外に家族手当や住宅手当についてもカットできるかどうかという点が問題となります。
この点について、最高裁は三菱重工業事件(最二小判昭56年9月18日民集35巻6号1028頁)で以下のとおり判断しています。
「被上告人ら(労働者)は、本件家族手当は賃金中生活保障部分に該当し、労働の対価としての交換的部分には該当しないのでストライキ期間中といえども賃金削減の対象とすることができない部分である、と主張する。しかし、ストライキ期間中の賃金削減の対象となる部分の存否及びその部分と賃金削減の対象とならない部分の区別は、当該労働協約等の定め又は労働慣行の趣旨に照らし個別的に判断するのを相当」とする(括弧書執筆者加筆)。
その上で、本件では昭和23年頃から昭和44年までの間就業規則の一部である賃金規則の中でストライキ期間中はその期間に応じた家族手当を含む時間割賃金を削減する規定を置き、実際に減額をされてきたこと、その後も同様の内規が存在していたことを理由に、家族手当の削減が労使慣行として成立していたと認めました。
この裁判例からすれば、労働協約や就業規則の定めや従来の慣行、通常の賃金・遅刻・早退に関する賃金カットの取扱いを考慮事情として賃金カットの対象に含まれているかどうかを検討することになります。家族手当であれば必ずカットできるわけではありません。
賞与における取扱い
ストライキ期間を対象期間に含める賞与については、当該期間の出勤率を算出するに当たって、機械的にストライキ期間を欠勤日数として算出することはノーワークノーペイの原則に反しないとされています。
しかしながら、ストライキ参加を一時金算出上の勤務成績評価においてマイナス評価をすることは正当な争議行為を理由とした不利益取扱になるため、不当労働行為として許されません。
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