争議行為の影響を受けた取引先からの損害賠償にも応じなければならないでしょうか?

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

質問マーク従業員が争議行為を行ったことで影響を受けた取引先から損害賠償の請求をされています。

会社として応じる必要はありますか?

残業のイメージイラスト

 

 

弁護士の回答

弁護士橋本誠太郎イラスト

企業が債務不履行責任を負うかどうかについて、議論の余地がありますが、応じなければならない可能性があります。

取引先との間で不可抗力による免責条項を締結しておくことがリスク回避につながります。

 

 

解説

争議行為と第三者

サラリーマンのイメージ画像争議行為が原因で取引先などの契約が不履行になってしまう可能性があります。

この場合、取引先としては、債務不履行に基づく責任を求めることが考えられるわけですが、使用者が取引先の請求に応じなければならないかについて学説上議論されています。

これは、債務不履行責任の根拠となっている民法415条の「債務者の責めに帰すべき事由」が争議行為の場合も認められるかどうかという問題です。

この点に関して、争議行為は企業内部の現象であり、外部の第三者が損害を甘受すべきでないこと等を理由に、使用者は債務者責任を負わなければならないという見解と使用者は代替労働者の雇入れなどによって操業を継続することは不可能に近いことや憲法28条の労働権は第三者に対しても争議行為に起因する間接的な損害の甘受を要請しているとして、これを否定する見解があります(西谷467頁)。

こうした債務不履行責任について、リスク回避の方法として、取引先との契約に不可抗力免責条項を設けるという対応が考えられます。

不可抗力免責条項とは、地震といった天変地異や戦争、原材料の納入不能など、債務者が影響を及ぼし得ないと考えられる事由により、債務不履行となった場合でもその責任は免除するというものです。

解説する弁護士のイラスト不可抗力免責条項の事由の一つとして争議行為を記載しておくのです。

裁判所もこうした免責条項の存在を理由に争議行為により列車が遅延したことに対する損害賠償請求を棄却しています(国鉄損害賠償事件、最二小判昭55年7月18日判時978号45頁)。

 

 





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